動詞の「見る」をとりあげた歌を助動詞でも取り上げたいと思います。
ここでは「ゆ」です。
動詞「見る」の未然形「み」に接続している「ゆ」は、可能の助動詞です。
「見ることができる」ですが、「見える」くらいになりますね。

「ゆ」には、自発・受身の意味もあります。
ただし、今では、「る」「らる」という助動詞の方が、一般的に使われるようになり、慣用句と
して固定した「いわゆる」「あらゆる」などをのぞいて、あまり使われなくなりました。

このように歌で使われることは多く、「射ゆしし」のなどの枕詞もあります。
音も何となくやさしく響く気もします。
上代に使われた助動詞も工夫して詠みこんでいきたいものですね。



橋をゆく時千曲川藍深くふたわかれせし水流が見ゆ    

                           稲葉 京子
「しまひたる」の「たる」は、過去(回想)・完了の助動詞「たり」の連体形で、活用語の連用
形に接続します。

ここでは、「見てしまっている」くらいの感でしょうか。

もとは、「て」「あり」の形であったようです。
ある動作が、完了して結果が残っていることを示すことが多いようです。現代語の
「〜ている」「〜てある」に近いものです。

では、同じ完了の助動詞の「つ」「ぬ」と違いは何でしょうか。
「つ」「ぬ」は、動作が完了したことに重点が置かれます。
それに対して、「たり」「り」は、その完了した結果の存続に重きが置かれているということです。

と、次に、「たり」と「り」の違いも気になるところであるが、「り」は、上にくる動詞の種類が限定
されることで、「たり」の方が幅広く接続するというくらでしょうか。

同じ、「たり」でも、断定の助動詞もあります。
これは、もとは、「と」「あり」の変形であり、接続が体言です。

例になる歌が思いつきませんが、
「菩薩たる」のように「〜である」のように使われます。
違いは明らかです。。



欲と俗見てしまひたる夕ごころそろそろ鶴に還りましょうか    

                           今野 寿美
ここでは、ふたつの「なる」について考えてみます。
「吉野なる」と「鳴くなる」です。

まず、「吉野なる」の「なる」は、断定の助動詞「なり」の連体形です。活用語の連体形や体言
や副詞(「かく」「さ」「しか」)や助詞(「と・て・ば・のみ・ばかり」)などに接続します。
例えば、「歌なれば」というと、「歌だから」となります。

ここでは、場所を表す名詞についていますから、「吉野にある」の意です。

次に、「鳴くなる」の「なる」は、伝聞・推定の助動詞「なり」の連体形です。活用語の終止形に
接続します。
音や声を耳にしたときには、「〜が聞こえる」。
推定したときには、「〜ようだ」「〜らしい」。
伝聞であれば、「〜という」「〜そうだ」「〜聞いている」。
のようになります。

ここでは、「鳴いている(のが聞こえる)」になります。

このふたつの「なり」は、活用も異なります。




吉野なる夏実の川の川よどに鴨そ鳴くなる山影にして     

                             万葉集 三七五
このお歌もポピュラーですね。
助動詞もたくさん使われていますが、まずは、「驚かれ」の「れ」に注目です。

可能・自発の助動詞「る」の連体形の「れ」です。
ここでは自発ですので、意志とは無関係に動作が起こるので、「自然にびっくりしちゃう」
のですけれど、「ぬる」という過去完了の助動詞も付いていますので、「(自然に)驚いてしま
った」くらいの感じですね。

そうそう、「ぞ」の係助詞があるので、連体形でお歌を結んであることも言い添えておきます。

そして、「来ぬ」です。
「きぬ」と読みます。動詞「来(く)」ですが、カ変の動詞で、「こ・き・く・くる・くれ」と変化します。
(少し違う変化ものちに出てきますけれど、ここでは、置いておいて。)

「きぬ」と読めば、連用形接続した「ぬ」という助動詞は、自然に完了の助動詞「ぬ」ですか
ら、「(秋が)来たと・・・・」となります。

間違って「こぬ」と読んでしまうと、あら大変、未然形接続の「ぬ」は、打消しの助動詞ですか
ら、「(秋が)来ない」ということになってしまいますね。



秋来ぬと目にはさやかに見えねども風の音にぞ驚かれぬる     

                             古今集 秋上
いざ行かむ行きてまだ見ぬ山を見むこのさびしさに君は耐ふるや  

                             若山 牧水
・助動詞とは、独立して用いることはありません。
 助詞と違って活用形があります。
 用言・体言・他の助動詞などについて、話し手の判断などを表わします。
 たくさんの種類や接続がありますので、少しずつ進みたいと思います。
 最後に活用表を作ることを目標にします。
その2 助動詞を考える
こちらは、「む」という助動詞の繰り返しによる効果です。
                    
「行かむ」も「見む」も「む」は、どちらも助動詞で、推量や意志を表わします。

「いざ」という感動詞に引き出された「む」は、「さあこれから」というような意気込みの時
に使われます。強いうちだしです。

そして、「見む」の「む」もおなじ助動詞ですから、たたみかけの効果もあります。

強くなりすぎないために、「見ぬ」「見む」と、同じ響きをもって、リズムや調べに配慮して
詠まれていることも、注目に値するところです

「む」は、活用が四段活用であるが、活用の一部を欠いていて、終止形と連体形しかあり
ません。
また、現代では、「ん」という表記になっています。

動詞・形容詞・形容動詞・助動詞の未然形に接続します。



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