@ 三音の枕詞とその掛かり

千葉の→「葛野(かどの)」
 ・千葉は、たくさんの葉の意味で、葛は、葉が多いことから関連して「葛野(かずの)」という
  地名にかかるようになった。


A 四音の枕詞とその掛かり

あまだむ→「かる」
 ・「天飛ぶの転じたもの」

うまざけ→「三輪」
 ・酒の瓶を古くは、「みわ」と呼んでいた。そこから、「三輪」という地名にかかるようになった。
  同義の「三輪山」「三諸(みもろ)山」「神名火(かむなび)山」にもかかる。
  さらに、「餌香(えか)市」「鈴鹿」にもかかるが、これは、美酒の産地であるという理由で、
  後に加えられたものらしい。

*「うまざけの」「うまざけを」として五音で、使われる形もある。


B 五音の枕詞とその掛かり

<あ行>

あおつづら→「くる」。
 ・蔓を繰ることができることから「くる」という音で掛かるようになった。

あおによし→「なら(奈良)」。
 ・「あおに」は、青土という意。「よ」と「し」は、助詞。

あおはたの→「忍坂(おさか)」「葛城山(かずらきやま)」「木幡(こはた)」。
 ・青い旗が立つように木が茂っている様子から掛かる。

あおみずら→「依網(よさみ)」。
 ・万葉集に見られるが、語源は不詳。

あおやぎの→「細き眉ね」「いと」。
 ・青々と茂った柳の葉が細い眉に似ているから。また、細い糸にも見立てている。

あがこころ→「明石」「筑紫」「清隅」。
 ・「わが心赤し」から明石に
  「わが心を尽くし」から筑紫に
  「わが心清し」から清隅に掛かる。

あかねさし→「照る」。
あかねさす→「日」「昼」「君」「紫」など。
 ・「茜色」の略なので、色から掛かる。

あかひもの→「長く」。
 ・「小忌衣(おみごろも)の赤紐は長い」ので。                         

おかぼしの→「あくる」「飽かぬ」。
 ・「明けの明星」から。

あきずしま→「やまと」
 ・「神武天皇の故事」から。

あきずばの→「袖」
 ・「蜻蛉の羽のように美しい」という意から。

あきやまの→「したう」「色なつかし」。
 ・「秋山のもみじ」の縁から。

あさがすみ→「鹿火屋(かひや)」

あさがみの→「思い乱る」
 ・「朝の髪は乱れている」ことから。

あさかやま→「浅し」
 ・音が同音であることから。

あさぎりの→「おおに」「八重山こえて」「乱るる心」「思い惑い」
 ・「朝霧が立つと物がはっきり見えない」「朝霧は幾重にも立ち込める」ことから。

あさじう(ふ)の→「おの(小野)」

あさしもの→「消(け)」または、同音で「け」
 ・「朝霜は日光に当たるとすぐに消える」ことから。

あさづきの→「ひむか(日向)」地名

あさづくひ→「向かう」
 ・朝付くは、朝になり始めること。ひは、日。

あさつゆの→「消(け)」「命」「わが身」「置く」
 ・「朝露は消えやすくて、はかないこと」などから。

あさどりの→「朝立ち」「鳴く」「通う」

あさひさす→「とよ(豊)」「かすが(春日)」

あさもよし→「紀」「城上(きのえ)」
 ・「紀の国が麻の産地であること」などから。

あしがきの→「ふる(旧)」「みだる」「間近し」
 ・「葦垣は古びて乱れやすい。また、その結び目は間が近い」から。

あしがもの→「うちむれ」
 ・「葦鴨は群がって飛ぶ」から。

あじさわう→「目」「夜昼知らず」
 ・「あじ(あぢ)さわう(障ふ)」から。

あしびなす→「栄ゆ」
 ・「馬酔木の花のように咲き栄えること」から。

あずさゆみ→「射」「引く」「張る」「本(もと)」「末」「弦」「矢」「音」など
 ・「弓」から。

あまぐもの→「たゆたう」「行く」「別る」「よそ」「おくかも知らず」「たどきも知らず」
 ・「天雲のと書き、空に浮いている雲の様子」から。

あまごもる→「みかさ・三笠」
 ・「雨の縁」から。

あまざかる→「ひな・鄙」「むかう」など
 ・「都から遠く離れた意」「はるかな天を向かい見ること」から。

あまづたう→「日」「入り日」
 ・「天をめぐる意」から。

あまてるや→「日」
 ・「天の縁」から。

あまとぶや→「雁」「軽」など
 ・「空を飛ぶ意」から。

あまびこの→「音」「おとず(づ」る」
 ・「こだま・やまびこの意」から。

あもりつく→「天のかぐやま」
 ・「天から下り着くの意」から。

あらおだを→「かえす」など
 ・「荒小田を耕す意」から。

あらがきの→「よそ(そと)」
 ・「物の隔てとなるものの意」から。

あらたえの→「藤・ふじ」

あらたまの→「年」「月」「春」「きえ(へ)」など
 ・「年の初めの意」「あらたまの来経(きえ)行く年の意」から。

ありきぬの→「あり」「さえ(ゑ)」「たから」「三重・みえ」
 ・「鮮やかな絹布の意」から。

ありそなみ→「あり」
 ・音から。

あわゆきの→「わかやる」「消」など
 ・「淡雪の柔らかく消えやすいこと」から。

いえつとり→「かけ(鶏)」
 ・「家で飼う鳥の意」から。

いおえなみ→「たちてもいても」
 ・「幾重にも重なる波の意」から

いけみずの→「いい」「そこ」「下」「深き」「つつむ」
 ・「池の水はいいで引く意。池の底の意。池の堤」から

いさなとり→「海」「浜」「灘」
 ・「磯魚取(いそなとり)」の転。

いさりびの→「ほ」
 ・「火」の古語を「ほ」というので、同じ語で続けた。

いすくわ(は)し→「鯨」
 ・「勇(いさ)細し(くわし)」から。

いそまつの→「常にいます」
 ・「磯辺の松が長生きで常緑であること」から。

いちしばの→「いつしか」
 ・頭韻の反復という音韻から

いなぶねの→「否(いな)」「かろし」
 ・音から。「刈った稲を積んで運ぶ」意から

いなみのの→「否」
 ・印南野は播磨の国のことだが、音から

いまちづき→「明かし」「明石」
 ・「居待ちの月は明るいこと」から

いめたてて→「跡見(とみ)」
 ・「射目を立てて獣の足跡を見させる」意から

いめひとの→「伏見」
 ・「射目人は、伏し隠れて狙う」事から

いもが家に→「いくり」(ちめい)
 ・「妹が家に行く」から

いもがうむ→「小津」
 ・「妹が績む苧」から

いもがかみ→「あげたかわの」(地名)
 ・「髪をあげる」ことから

いもがきる→「三笠」
 ・「妹が笠を着る」から

いもがそで→「まく」
 ・「妹が袖をまく」から

いもがてを→「とろし」(地名)・「とる」
 ・「妹が手をとる」から

いもがひも→「ゆうや川」
 ・「妹が紐を結ぶ」から

いもがめを→「みそめ」「はつみ」(地名)
 ・「妹が目を見る」から

いもにこい→「あがの松原」(地名)
 ・「妹を恋しく思って吾が待つ」から

いもらがり→「いまき」(地名)
 ・「妹のところに今来た」の意から

いゆししの→「心を痛み」「行きも死なむ」
 ・「射られた獣は痛手を負ってついには死ぬ」から

いわおなす→「ときわ」
 ・「石のように永久に」の意から

いわくだす→「かしこし」
 ・「岩石をくだすと恐ろしい」意から

いわつなの→「またおちかえり」
 ・「石の上をはう蔦は、伸びてまた、本に帰るものであるから若返りに例えたらしい」

いわばしの→「間」「近し」
 ・「飛び石の間隔」から

うきふねの→「焦がる」
 ・「船が漕がれる」から

うずらなく→「旧る(ふる)」
 ・「鶉は荒れ果てて草深い野に住む」から。

うずらなす→「い匍(は)ひもとほり」
 ・「鶉のようにという意味。鶉はひとところを這い回る習性を持っている」ことから

うたかたの→「消え」「消ゆ」「憂き」
 ・「あわの消えやすい」意から。「あわが浮く」意から

うちそやし(うつそやし)→「うみ」類音の「おみ」
 ・「打ち麻を績む」から。

うちひさす→「宮」「都」
 ・「打ち日射す」から「日光がよく射し込む」意。

うつせみの→「命」「世」「人」「身」
 ・「現世」という意から

うつゆうの→「まさき」「こもる」
 ・かかり方は不詳

うのはなの→「五月(さつき)」「憂き」
 ・「卯の花は五月に咲くこと」から。「同音の反復」から

うばたまの→「黒」「夜」「夢」
 ・「ヒオウギの果実がぬばたま・うばたまと呼ばれ黒い」から。
 ・「暗い」意から。
 ・「夜見るという」ことから。

うまさけの→「神」「かみ」「三輪」「三諸」「三室山」
 ・「酒の瓶のことを古語で「みわ」ということ」から。

うまさけを→「かみ」「かむ」など
 ・「酒は醸し出す・・・醸んで造る」から。

うましもの→「阿部橘」

うみおなす→「なが」
 ・「績麻のように長い」から。

おうおよし→「しび」
 ・「大魚よしで、しびという魚は、大魚」から。

おうしもと→「もと」
 ・「もと(木へんに若)は茂った小枝の意」ただし、音から。

おおきみの→「三笠山」
 ・天子・皇族が蓋(きぬがさ)をさす意」から。

おおくちの→「真神」(狼の古名)
 ・「狼の口が大きい意」から。

おおしまの→「なると」
 ・「周防の大島と本国との間に大島鳴門がある」から。

おおとりの→「羽易(はがい)」
 ・「大鳥が羽を交えるさまからという羽交(はがい)」の音から。

おおぶねの→@「津」「渡」「かとり」
         A「たゆたう」「ゆた」「ゆくらゆくら」
         B「頼む」
 ・@「船」の縁から。
 ・A「船の動揺する」縁から。
 ・B「船を頼みとする」意から。

おきつとり→「あじ」「鴨」「味経(あじふ)」
 ・「沖の鳥」の意から。「音」から。

おきつなみ→「頻(し)く」「競う」「とおむ」「高し」「立つ」
 ・「沖の波が幾重にも折り重なって立つ」意から。

おきつもの→「隠(なば)る」「なばり」「靡(なび)く」
 ・「沖の藻は隠れ、また、波になびく」から。

おくつゆの→「消(け)」「消え」・「たま」「たまさか」・「かかる」
 ・「露の消えやすさ」・「形状」・「露がかかる意」から、それぞれ。

おくやまの→「まき」「立つ木」「ふかき」
 ・「杉や桧など真木は奥山に生える」から。

おしどりの→「惜し」・「憂き」
 ・「頭韻」・「水に浮く」から。

おちがみの→「乱れ」
 ・「髪が乱れて抜け落ちる」意から。



3.枕詞一覧
上の例の中で、意味で関わるものについては、口語訳します。
それ以外のものは、口語訳に生かさなくてよいとされています。


訳すものの例・・・・久方の→雲にかかる(遠い彼方の意)

 わたの原 こぎ出でてみれば 久方の 雲居にまがふ 沖つ白波


 (広い大海に船を漕ぎ出してみると、はるかに遠い沖の方には、雲と見間違えるほどの白波
 が立っているなあ。)






2.枕詞の訳
@ 意味で関わるもの(修飾語的な関わり)

例・・・・夏草の→「野」「深し」などにかかる。
     (夏草は、野に深く茂るという意味から)
    奥山の→「まき」「深き」などにかかる。
     (「まき」は、真木のこと、つまり、杉や檜をさす。それらは、奥山に生えるという意味から)


A 頭韻で関わるもの

例・・・・ちちのみの→「父」
     ははそはの→「母」
    
     *「ちちのみの」は、「父の実の」で、イチョウの実・銀杏とかイヌビワの実の古名らしい。
     *「ははそはの」は、「柞葉の」で、ナラやカシワの別称。


B 意味と頭韻の両方で関わるもの

例・・・・まつがねの→「待つ」「絶ゆ」などにかかる。
     「松が根」で松の根のことで意味、「まつ」で音でも関わる。
     さばえなす→「さはぐ舎人」にかかる。
     「さ」の音で関わらせ、5月ごろに群がり騒ぐハエのようにと意味でも関わる。


C 掛詞のように関わるもの

例・・・・ゆくみずの→「過ぐ」「とどめかぬ」
     「水」で、流れているから留まらない。
     あづさゆみ→「いる」
     「弓」で「射る」。





1. 枕詞と導かれる語の関係。
特定の言葉を導き、修飾したり、句調を整えたりするために用いられます。

一番多いものは、五音ですが、三音・四音・七音のものもあります。
三音・四音・七音

五音[あ行か行さ行た行な行は行ま行や〜わ行
枕詞
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