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 1月
心寄せ 愛

一一の並ぶ毎月その時間 震災慰霊「鎮魂の森」に

復興の支援に購う味噌醤油陸前高田八木澤商店

そはなべて瓦礫にあらずと語る人しずかな海を静かに見つつ

「この海はなんにも悪くない」と言い漁師は立ちぬ朝日に向かい

苦しみに寄り添うすべの見つからず耳を傾けただ頷きぬ

海を背に子らの笑顔と歓声と希望を乗せて 凧 凧あがれ

しあわせの数を重ねていけるよう笑っていよう心寄せあい

 
2月
ほつこり散歩

きょうは西きのうは東あすは北 孤独のカケラ集めて歩む

昨晩の予報の耳に残りたり「ところにより雨」さがして歩む

よりどころ求めて祈りをささげんと七福めぐりのほっこり散歩

朱の鳥居くぐればビルの一角の大黒神は鎮かにおわす

末廣と縁起よき名に呼ばれいる神社に祈る息子の勝運

椙森(ずきのもり)神社に参り富塚をながめて恵比須顔なるワタシ

 
3月
心に応う

学芸の成就祈らん水天宮 身籠ることなきこの身にあれば

ほっこりと巡りてゆけばビルのあい寶田恵比須神社に通ず

首都高速一号線に沿い上る小網神社にあまた列なす

校庭にひびくイチニッに合わせゆく茶ノ木神社に八福めぐり

なぜ詠むと風に問われて「永遠を創るために」と心に応う

君が笑むうれしきことを七音に五音につづればそれがしあわせ

 
4月
さよなら三月

さよならの三月過ぎて友発ちぬまた来て四月にならぬ中空

またひとつ大事なものが往き過ぎる 秒速五センチ散るさくら花

友語りわたしが笑う日常をふとも消し去る辞令という紙

子が巣立ち友が発ちゆき花は散る四月の雨は身にしみいりぬ

さびしきを口にはせぬと決めてより短歌に詠う細くちいさく

倒れ往き流れてゆきしと思う季を短歌に残さん美しき言葉に

 
5月
くもりのち雨

どんな日もゴムまりポンポン弾ませて来たのにナントも野暮な風ねぇ

はじまりは確かに垂線やさしきに気づけば此処はどしゃぶりの雨

少しだけ曲がるところを躊躇えば座標はズレてくもりのち雨

難解な医師の顔より視線とく窓高くゆくタンポポのわたげ

唐突にせなを押されし春の宵こころのうちは闇に残さん

遠回りしすぎたみたい秋ふゆと 春から夏へと雨はつづきぬ

限界を口にはせずに淡々と画像突き刺す医師の指先

雨と見てあめとつぶやき詠うとき良きも悪しきも流されてゆく
 
6月
ただただ
 

冷淡にわたしの脇をすり抜けし時間という名のゆくえは掴めず

がらくたの傷みかかえて伸ばす指つかめるかしらあの『蜘蛛の糸』

全力で奏でつづけてワンブレス三十一文字がわが開放区

ぬ・ぬ・ぬ・ぬと打消しに詠む今日の日を明日はハ行に笑いとばさん

あんな坂こんな坂ひとりのぼりゆく「神は見てる」の看板に遇う

この心そのあの心受けとめん私にできるただひとつだけ

贈られしストラップはさみを声で読む「小っちゃくたってちゃんと切れます!!」

告げくれし「がんばってたの、見てたよ」の言葉に泣きぬただただ泣きぬ
7月
悲しみひとつ

さやさやと白き葉揺らす半夏生ちろろちろろと添う水の音

雛桔梗ふるふるふると身めぐりの風に呼ばれて解くかくれんぼ

ひそやかに野に咲く名前も知らぬ花それも一つのあこがれとして

声高に叫ぶ人への哀れみも口には出さず往く雲ながむ

照らされし光に笑う人の居て悲しみひとつ知る影もある

やさしさを説きても仕方なき人と思いて待ちぬ梅雨明けの日を

もがきてもわたしはわたしの箱の中つまりは概日リズムのなかに

散る花のリズムゆるらら眼で追えばまばたきごとに憂いも散りぬ
 
7月 その2
リア充

梅雨の間の晴れたる空に伸びをして朝を受けとむそれもリア充

若者のネット俗語に戸惑いつうつつの充実と聞けば嬉しも

眉ひそめ負につつまれて生くるよりプラス思考にわれはいきたし

知りたりと鼻高々にリア充を遣えば子らもニンマリ笑みぬ

ひとつ笑みふたつ笑えば垂れ込めし雲より明るき光は射しぬ

世のにごりスイッとあしらい生きゆかな水黽あかいなつぶやき詠い

七夕のよろこびかなしみ吸われゆき空には願いの星つぶの橋

健やかにともに詠いていきたきを七夕人形ふわりと揺るる

 
8月 
ちさき声聞く

背負われし思い出もなきおさな子の背に寄り添いてちさき声聞く

おさな子はわたしに何を伝えたき言葉少なに手をにぎりくる

大好きなドラえもんやらのび太やらおさなの夏は雲渡りゆく

さみしきをつぶやくおさなの背をさすり風にうたいぬ夕焼けこやけ

何となし寄り添うことしか出来ぬまま保育終えれば笑顔に別る

わんぱくにひと日付き合う別れ際「先生お茶目」とさよならに代え

交わし得る言葉のかずは足らざるも眼に映りたるものに声聞く

「ジージーと一生懸命ないてるね」高きを見上ぐるおさなに蝉声

 8月 その2
声明
(しょうみょう)

一刹那にかけて過ごすと鳴く蝉の声音をたかき声明(しょうみょう)と聞く

切実な思いに耐えし幾日か「ないた烏」の笑えぬもあり

ひややかな自分に気づかぬふりをして鳴く蝉よりも蛍とならん

安心(あんじん)の難さを思う日々にしてアスリートらの泪を見つむ

過激なる言葉の渦のなかにあり怨憎会苦を捨てられぬまま

坂道のけわしきときも君といて笑いあえれば進めるものと

重き足ひきずる音にも一定のリズムはありてフッと笑える

くみ合わす手のすきまより吸われゆき平和の祈り八月の空へ

 9月
メモワール
 


眼に耳に秋色模様空模様一刹那ごとに焼き付けてゆく

ひともとの花は枯れてもメモワールその根に茎にいつか会うため

朝に咲き色を変えゆく酔芙蓉夕べうつつをこぼれてゆきぬ

ひややかな自分に気づかぬふりをして鳴かぬ蛍のままに生きなん

切実な思いに耐えしとわが事を語る他人を烏は笑う

安心(あんじん)の難さを思う日々にしてアハハと笑う人の恋しき

列島に秋雨前線沿うと聞くひと恋しさに浸っていよう

あまたなる迷いは今朝のしら露に置きて往きたし五十路ゆたかに

 10月
罪を許しぬ
 
青深きラピスラズリのターバンにクールな瞳の額絵の少女

斜交いに光を受けし黒き瞳(め)の少女はきのうの罪を許しぬ

白きより白き真珠の耳飾り心の奥処にひかり与うる

艶やかにうすく開きし唇より如何な言葉のいくひら舞いし

ももくさの思いを持ちてこの場所にただフェルメールの絵画を見つむ

つかの間をむかい合う絵のかがやきのただ一枚に心預ける


11月
愚かしき裡

たがために祈るに非ず円通院愚かしき裡しずかに見つむ

ひいふうみもみじの零す雨つぶを数えてたどる伊達家の歴史

つながりし縁(えにし)の糸をこの寺にしかと結ぶと若きふたりは

ためらいて出でたる月を見上げつつ想いし人もこの空の下

いくたびも願いしことも薄るるに居待の月の明るさかなし

満ちゆける月にもまして欠けゆける月かげ愛し人を恋うれば

12月
バランス


詠むことを絆となせば細くともたぐりたぐりて声と伝わる

起き上がり小法師なれぬにわが心予感なきまま崩れて倒る

「独りはネ、魅力的よ」という人の上手に回す独楽のバランス

「疲れたね」「そうね」「寒いね」「大事にね」温もりつれて行き交う会話

「夕焼けのアカは燃えても崩れない」「西から東にやり直すから」

折々に己が務めに迷う夜に眺むる星の拍手を聴きぬ

はだか木に小さくまるまる木の葉たちヒソヒソかさこそ春への約束

良きことを良きと見つめて静やかにたのしき心で春光待たむ

2012年
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