1998年

1月  「秋から冬へ」

吾娘と行く秋桜の道ももいろの可憐な笑顔が問いかけてくる

ヒロインは譲れないわというように紅紫の秋桜三つ

夕暮れの舗道をうめた落ち葉たち風に誘われ踊る仕草で

カサコソと散って積もった落ち葉たち冬の近きを告げてささやく

窓外を春夏秋と彩りて落ち葉となりて命ひきつぐ

前だけを見ては歩めぬこんな日は一秒ごとを思いやりたい

あがいてもまたあがいても冷淡に時間の速度我と対峙す

一日が偶然というドラマなら明日につながる今日を持ちたい




2月  「雑詠」

もとよりは口ゲンカなんて似合わない心を破壊されて苦き日

ごめんねの言葉にさえもうなずけずこっくりとした深き闇見る

こわばった視界の隅に揺れている枯れ枝に返す言葉をさがす

出逢いから綴りつづけたダイアリー七冊目からは君は想い出

移りゆく時間が妙に重たいと君と出逢って別れて気づき

掌の運命線をたどりつつ幸せさがす年また暮れる

哀しみが心の扉をたたいても何も変わらぬ今日は月曜

雄大な紅葉の中に隠れてる赤い果実を風が知らせる




3月  「色」

師走には今年の気持ち分けてみてブルーの心立ち止まらせる

新しきパジャマで新年迎えんと病の父は白き息吐く

白き息陰と陽とがあるという物思いする果てに悟りぬ

病室の橙色のカーテンは光のような風をはらんで

「しっかり」の病室に残るメッセージしずくとなりて無色に流る

ため息の重さに気づく夕暮れは明りの消える刹那にも似て

運命は避けられぬ風おわかれにメロディーつきの異次元色に

新しき恋は錯覚冷静にソフトフォーカスかけた薔薇色




4月  「転べない日々」

いつだって無理と無茶との真ん中を生きているから転べない日々

どうせなら転びそうとは言わないで派手に転んで起ち上がりたい

「頑張れよ」疲れ切ってる身体には「明日は天気」と聞こえたりする

かけられた言葉ひとつがやわらかで信じられると無防備になる

休日の空にきれぎれ浮かぶ雲コマ送りされた今日が暮れゆく

振り返り「よかった」と語る昔には大きな誤解が渦巻いている

本質をぼやけさすほど年月は大きな力を静かにいだく

歳月は流れ流れて人生の小さきシミまで吸い取るらしい




5月  「長野冬季五輪」

真直ぐなるこころざし持つスケーター小さき身体で世界を制す

咲きさかる日の丸の花風を待つ君よ白馬の鳥とならんと

雪辱を力にかえて躍ぶきみの高き飛型に心ふるえる

風神が住むとう白馬の空を背に試練のV字壁を越えゆく

正と負の十六日間のストーリー国民という配役の我

国民になりきっている人々の日の丸・万歳・君が代斉唱

「故郷は地球」とう君にいざなわれ地球人となる閉会式に

大空に花火がつくる季節美を国民にもどり誇りとなしぬ




6月  「変わる」

ひたすらに時を過ごして目をやればガラスが鏡になる夕間暮れ

昨日今日そして明日へと降り続き別れを出逢いに変える春雨

別れから出逢いへ移りゆく季節ひと雨ごとに心はやりて

透明な空気の壁にさえぎられ君の心の読めないつらさ

もどかしい 君の心がつかめない 空気の壁に気持ち平行

君に向け無邪気に心伝えたい強い視線の先に居たいと

真剣な息づかいして化粧する我の背中は無防備なまま

この紅を入れ一瞬に変化する鏡の中の今日のワタクシ



7月  「散る花の」

咲き盛り短き命終える花生まれたばかりの風に送られ

桃色に染まりて風はまなかいをスロークイック・ら・ら・ダンスィング

こだわりを捨ててながめる花びらは四月の風をしなやかにして

風を染め散りゆく桜「待て待て」と幼き子らがくるくる踊る

あの空にひときわ映えて散りゆくも水面にも映ゆこの花筏

葉桜のまぶしき緑背景に娘らの笑顔のピカピカとして

理由などわからぬけれどきみの顔きりりと見えて勢いの春




8月  「豊かな時間」


偶然の風もくれんの香り降る信号待ちの豊かな時間

風を待つ蒲公英の絮意志を持ち生まれ変わりの場所さがすごと

風にゆれ水面に落つる瞬間に途方にくるる蒲公英の絮

五と七を幾度も数え言葉変え並べながらも生まれない歌

真実を伝えきれない歌詠みに瞳の奥でゆがんだ時計

きみと居る今日この時の安らぎは足りないものも補うように

病とう負のポイントも受け入れた君の心に花束贈呈

一歩ずつ遠ざかるびと君の目の光に影の見え隠れして




9月  「逆光線」

病室の逆光線の中に見る父の笑顔に胸ふさがるも

終えんのベルがなるまで時間との追いかけっこを楽しむと父

いま父は病室の窓ゆ四季を知る生きの証しを確かめながら

病室は人間性も体温も伝わらないと深く息する

ふともらす一言一言重たくて向き合う現実思い知らさる

外泊を終えて報告する病人(ひと)は「馬車はかぼちゃにもどりました」と

帰宅するわれ引き留める声のごと背中で聴きしドアのきしみの




10月  「満天の星」

折りからの風をたよりにだとる道守りてくれし満天の星

君がためあふれるほどの幸せを分けてあげると輝くデネブ

君がためすくいましょうか幸せを見渡す空の北斗七星

一点を守りて強き意志示す北極星の激しきエナジー

アルタイル・ベガのかそけき声を聴き願いを込めて笹飾る夜

人生の階段高しさらなるは三十九段マイバースデー

ふたり子が祝いてくれしバースデー三十九歳憂うつもあり

食卓を彩りしものあれこれとたとえば今日の君の笑顔の





11月  「会津へ」

雲低く会津の町をおおえども歴史携え立つ鶴ヶ城

もののふの生活様式語る老い古き会津の時代をおいて

携えし会津の歴史語る老いいくさがここにあるごとく聴く

武家屋敷自刃の間なる太き文字遠き歴史の真実を見る

ここ会津西郷頼母一族の哀歓胸にせまりくる旅

生きていく難しさなら同じだと今も昔も戦いと翁

文学と呼ぶには遠きわが歌は心をのべて素になれるとき





12月  

inserted by FC2 system