1999年


1月  子を守りたき

意外にも少年法の残酷さ世に知らしめす『淳』という本は

悲しみもいつかは色を変えてゆく『淳』という本に心揺れるも

何もかも殺伐としたこの時代溺れぬように子を守りたき

たくさんのヒーローたちを闘わす幼のつくる自由空間

未知の島空想の街思うまま陽だまりのなか夢に舞う子ら

顔しかめ「寒い」「寒い」と言う横で北風にのって唄えと幼





2月  冬へ

ハンドルを持つ君がギアをLOWにして窓いっぱいの景色を作る

ひらひらと銀杏紅葉の舞い落ちる仕草やわらか粋な木枯らし

彩やかな紅葉かそけき音で舞い冬のピースへジグソーパズル

「久しぶり」こんな言葉で逢えたから月の光を待って帰ろう

一分を惜しむごとくに早口の君の背照らす立待の月

真実は雑然とした日常のほらこの子らの君への笑顔




3月  冬晴れ

冬晴れの道行く人を楽します帰り花には寂しさもあり

時ならぬ二輪の花に誘われてまわり道する穏し冬晴れ

北風のつくりし旋律響く夜独りの時間進まぬようで

風止みて見上げる空の星々はみがかれしごと冷たくひかり

みがかれし星に守られ帰宅する子ら輝ける降誕の日に

「おはよう」と往き交う子らの白き息生きる強さを示すごとくに




4月  なぜ急ぐ

「なぜ急ぐ」答えぬままに君は逝くトラベルバッグを持たない旅へ

いじめメモ自殺加害者A少年守らるべきは誰の人生

皮肉にも守られるのはいつだって加害者Aの人権ばかり

取り戻せ子どもの心親の愛「もしこうすれば」の通らぬ人生

平等は均一ということじゃないデコボコでいい凸凹でいい

仰ぎ見る天よりヒラリと降る雪を合図となして走りくる子ら




5月  旅へのドア

旅という雑誌を手にし夢の中「いってきます」の声はなくとも

長き日々不治の病と闘いて父は旅への思い語りぬ

病室で写真集などナビにしてイメージの旅へ声はずますも

病室のベッドの上でにこやかに旅へのドアはこの表紙とう

「寒いね」と声かけ合える友のいて気持ち寄り添う温もりのあり

前向きに生きようとして伸びをする立春の朝まぶしき日の出




6月  マリー・ローランサン展に

見るものを魅きつける「女道化師」の青の優しさ黒の寂しさ

淡き色繊細にして主張するマリーの描く肖像の青

寂しさと憂いに満ちた人生を愛なる色に描きしマリー

うららかな心浮き立つ日曜に「二人で旅をしよう」と散歩

日曜の風の拍手におくられて少し先まで歩を進めよう

黄と黒のダンダラ模様ふわふわと春の女神と呼ばれし蝶よ




7月  清明の

清明の風に吹かれて蒲公英のきらきらきらと歩道を飾り

春あらしゆきて蒲公英光まし黄色も映ゆる清明の空

久慈川の水面に浮かぶ花いかだ春は動いて南東の風

この花も短き日々を咲き誇り止まらぬ時間に送られてゆく

ぎっしりと張りめぐらされし地下茎の芽吹きかなしき竹の秋来る

葉桜のまもりてくれし公園のふらここゆれて笑顔こぼれる




8月  五月病

きれぎれに日常の中に澱みくる心は何故に病むのだろうか

術もなく幼子ののごともがきいて「五月病か」と鏡にたずね

あれこれと悩みて答えも出せぬまま一秒一秒秒針はゆく

こんな日は風と一緒に坂道を駆けおりてみる?行く先はどこ?

のんびりと草のにおいを背で感じ五月の坂をのぼっておりて

木のカーテン草のにおいにつつまれて五月の風と走りくる幼




9月  




10月  とき

ニッポニアニッポンという名を背負いなお守られて生きゆくトキは

たっぷりと注がれし愛それは何ニッポニアニッポン学名のゆえ

ニッポニアニッポンという名に生まれ翼広げて飛びたきは何処

「神様」と祈りを声に出したとき自分の弱さ認めたようで

四十という響きあまりに重すぎてケーキに揺れる火を見つめいる

人生の折り返しなどと励まされ妣の送りの歳に近づく




11月  雲の峰

雲の峰背負いてキラリ走りくる幼の顔に夏の色彩

この土手に入道雲を指さしてほほえみかわす母とおさな子

幼子の指さすさきをともに見て浮かぶ思い出雲の峰立つ

われもまた幼き夏のあの土手に妣と仰ぎぬ入道雲を

いいえともはいとも言えず涙したあの夏の日もあの雲の峰

ふたたびの夏に湧き立つ雲の峰想い出ひとつを胸にひそめて




12月  開演

開幕のアナウンス後のこの闇にいざなわれゆく「夕鶴」の世界

開幕を知らせるベルと一瞬の闇にくるまれ異次元に入る

開幕のベルに心を躍らせて名作の中に身をおくそっと

開幕の一瞬の無音ときめくも心押さえて瞳こらして

わらべ唄闇よりかすかに響きいて心これより名作の中

雑踏と日常を捨てつかの間を名作の中にひたる温もり





   

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