2001年 

短歌 ぬはり 誌上 9月号以前



9月 自問自答

行きどまりもどることなど許されぬ自問自答の合歓の花かや

四十歳人生これより折り返し風の流れに逆らってみる?

情熱と生み出すことは反比例思いは揺るぎ思いは捩れ

眺めてる思い上がりとうらはらの静寂の日々孤独の予感

いらないさバックミラーは捨てていけ視線は先へ夏の太陽

振り向かぬ前のみ見据えビームするライトの白のさす道なりに




8月  野球少年

真っ白なユニフォームの息グランドへ見渡す空はどこまでも青

「今日よりは野球少年見習い」と見上げた空はおじいちゃんの空

背番号35番に胸おどる吾息のしぐさに今朝のはつ夏

草分けてボール探すも練習と吾息は誰より数歩先へと

大鍋のカレーたちまち空っぽに無口になりし時間の終わり

監督のサインにうなずく吾息がいてそれにうなずく母なり我は




7月  悲しき春の

いくたびの春迎えんか君逝きて桜ひと枝手向ける孤独

幾年も重ね来たれどあの頃の変わらぬ笑顔君の遺影の

初恋と笑って語れぬ思い出は青春とともに君逝きしゆえ

突然に破壊されにしかの日々は絶望よりも邪悪となりぬ

若き日に言えないままの一言も今ならきっと簡単なのに

現実にもどりてフワリ春風に吾娘のスカートやさしく躍る




6月  さまざまな春


シャツを干すいつものことも春だから鼻歌になる微笑みになる

日常もグッとフォーカスしてみれば切り抜きしたいコマに遇う ドキッ

通信簿胸にかかえて走りくるはじける笑顔タッタッタンポポ

ベランダで手をふりながら「おかえり」とお出迎えまで春色となり

お母さんただいまという声はずみおかえりなさいとハーモニーする

ふくらんだ薄紅色の目撃者わかれと出会いの春いくたびも




5月  微妙なる

微妙なる境界線ひく春の風二人の間を通りすぎゆく

十年を君と歩みて振り向けば我のもがきは価値観の呪縛

飼われてる鉢のサイズを知りつくす金魚のごとき我の生き方

幸福を増幅させることもなくケ・セラセラなる我の人生

子育てに食い違いなどつきものと思える程には大きくなれず

温みたる光の中を歩みゆきお互いの非をそっと認める




4月  冬の星空

散歩道小さき光に誘われて遠回りする空の神話に

オリオンは千三百とう光年を我のもとへと旅して来たる

冬空の王者と呼ばれしオリオンの光哀しき神話を知りて

両肩に重荷を負いて行く時に行く先しめすそはカノープス

人生の深き闇夜に閉ざされて歩めぬ時に待つプロキオン

六連星寄り添いているその姿家族の姿空に知らしむ




3月  I T 革命

大切な思いさえすぐに届けられ我の心もI T 革命

新着のメールクリックしながらも軽い気がして受け止められず

この気持ちキーをたたいてクリックす物足りなさも時代のうずに

キーボード打てば気持ちが文字になり消し去る時もポン削除キー

心さえ危ういものに思われてメール打つ手もプルルとふるう

パソコンに文字打つ時のハイテンションありがとうさえサンキューとなる




2月  欠詠




1月  会話

美しき今日の夕焼けきっかけに秋の夜長を君と語らう

「そうよね」とうなずいてきくひとことの広がりてゆく君との会話

うなずけばその空間のここちよく二人の時の穏しき流れ

いろいろな会話かわして十一年かみしめており秋の夜長に

息のくれしどんぐりごまを回しつつ幼きころに想いをはせて

心ないひとこと返す口ゲンカ顔パックしてしばしダンマリ


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