2013年                                                                                         

  

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1月

揺るる天井   

音のなき朝に気づきし窓外にモノクロにある冷たき街は

ふるふると積む雪なおもふるふると寡黙な街を作り続けぬ

こころまで凍りつくよな雪景色 砕けることもうべなう奥処

初めからゼロと思えばこの足はも一度前に行けるだろうか

まるまりて眠れば消化できし日は疾うに過ぎにし方となりぬる

カーテンのあわいをぬきて星のごと丸き光の揺るる天井

しらじらと明けゆく朝に息を吐くたしかに白き温もりを持つ

弱音など吐けぬかわりの深呼吸あといくつ寝れば福寿草は咲む


2月 その@

光をつかむ

筑波嶺のブナの細き枝ツイと伸ぶ空をひかりをつかまんとして

キンとして耳に冷たき風をきく筑波の嶺の冬にま向かう

びょうびょうとほえて吹く風さらいしはひと日背負いし不念と思う

一月は往くよ二月は逃げるとか光の春へ咲む構えせん

「君が向き進みし方が前」という声に押されてこの年もゆく

ふた手には有り余るほどのしあわせを分けくれて子は成人となる

やさしさの難さを想うときは満つ「大人とは何?」「強く生きなん!」

折々におのが務めに迷う夜に眺むる星の拍手を聴きぬ


2月 そのA

誰も知らない

今日もまたマジックアワーの空色のやさしさだけになぐさめられぬ

つかの間をグラデーションに主張して夕陽はあしたへ帰りてゆきぬ

どの色が好きかと問われ空色と応うる空は誰も知らない

わたくしがわたくしであるそのためにあなたの場所と決別せんと

憂いもち人に添いゆく優しさを あわき緑のチーフにつつむ


2月 そのB

悪しき歌

風の音(ね)に思い吐き出す春の雪 ほほに受け止めともに泣きおり

泣きぬれて時の過ぎれば乾きたるほほは微笑むことを選びぬ

笑いても泣きても同じ時間ならアハハと過ごさん短きひと世

心なる曖昧伝わるはずもなし 長き時経て今さらに知る

伝わらぬこころを伝える価値を問う 尊き時間を費やす価値を

ならぬことはならぬものでも ただ一度 怒りのままに悪しき歌詠む

ただ一度悪しき歌詠み伝えたし やさしさなるは強さなるやと


3月

再生
 

黙とうのサイレン響き止まる町 2時46分からの再生

辛きこと消すは難きに幸せへ一画一画足す日々なれと

いつもなら出会いの季(とき)の花と咲く桜が今年はさよならと咲く

見上げたる空に大きく枝を張り花に抱かれて生き切るサクラ

身めぐりの仮の景色にゆくものに解ったふりでさよなら告げる

恋う人の歌聴くように過ぎし日々 胸にも耳朶にも響きつづけぬ

花咲(え)むもめぐる季節の哀しさを受け止めきれず歩み出せずに

スキャットに弥生の空ゆ雨は降り景色は変わる いざ歩めとや


4月

ケセラセラ

出来ぬともダメとも言えぬお人好し鏡に映る道化師ひとり

身めぐりの仮の景色にあるものに解ったふりで そっとさよなら

この場所に留まりおれば花笑みも季節のめぐりも哀しみばかり

ぬくとさももどりし寒さも春は春 花に守られ時計は進む

フレフレと春の応援風受けてさくら花びら空に帰りぬ

片膝を立てればそこに支え来る人もあるやも日本とう国は

痛みとは消え去らぬものと知りながら「痛いの痛いの飛んでけ」空に

鼻歌に好きな旋律ケセラセラわたしはわたしなるようになる


5月

葬送

いくたびの春の葬送さくらさくら 秒速5センチけして忘れない

言いさしの口のかたちのままにして視線移して天気を語る

マイナスの言葉をすべて吸いつくし立つ雲「あした天気になあれ」

春色の空に守られどこまでも気ままに行こう とめ・はね・はらい

何となく小首かしげて見る空にあっけらかんと雲は去りゆく

キュウキョクノオヒトヨシですパソコンの性格診断アンサー画面


6月

自転車

木洩れ日のつくりし蝶々手の甲にひらひらとゆく自転車こげば

自転車に薫る風うけオアシスへ「日曜日よりの使者」聴きながら

何一つ不自由のなき身にあるもハンドル切れぬ君なき道に

身の丈に合わぬ願いをかかえつつ紫陽花白き寺道めざす

花の寺巡れば白き紫陽花の本堂までを導きくれぬ

梅雨曇悲哀後悔未練歌自転車新風そして吹き切る


7月

一視同仁

無邪気なる笑顔に歌う「かたつむり」梅雨の晴れ間の紫陽花の葉に

あれこれと手を尽くしつつダジャレ言う保育の子らの笑顔に寄りて

何気ない言葉行き交う空間にきみが笑えば今日の大切

一つずつ止まると書きて「正」となる保育空間ゆるやかにして

何もかも「いやだ」が飛び交う保育室さびしさ映す夕焼けの窓

「お迎え」の声の行き交う保育室残る小さきため息拾う

指の間をそわそわそわと砂は落つ一刹那さえ留まらぬ意志に

省みて一視同仁思いしも夢のまた夢まずは「生きねば。」


8月


わたくしを一番知るもわたくしで知らぬもわたくし 影が語りぬ

ぼんやりとながむる道に強き影ひかりとともにわたしは生きる

本当はもっとやさしくなれるでしょアスファルトの影ゆらりと語る

泣いたってこんなもんだよわたくしの影はかすかに揺れてもどりぬ

すこしきの頭痛かかえて梅雨曇り空に吸われず地にある憂うつ

口立てに「ひかり」と言えば明るきに「かげ」はどっぷり沈みて響く

思いきり笑えばくねる影のあり そうだ生きよう大きく生きよう

つまづかず立ちて歩めば陽を受けつ大きな影がわたしを守る


9月

やわらかな
   韻律

疲れしは力を込めて生きしゆえ第六感のままに進もう

この空になにもないことのうつくしさ エンジン音は目には入らぬ

不安などいかなることにも付き纏う抱かれていても人はさびしき

すかすかと骨に響きし西風に九月の宵は丸まりて寝ぬ

やわらかな韻律なつかしSeptemberあの日の雨の記憶をひきて

秋風の立つ日のさびしさあざやかなBagを肩に西に向かわん


10月

ゆびきり
  げんまん

高き空見上ぐるわたしを見下ろして季節を連れてゆく蝶々雲

走らねばならぬと自分に言い聞かす羽根雲二枚とどまる秋にも

心地良き場所には非ずと叫ぶ児の負の粒散らばる保育の室に

うた一つなせぬ空にはもつれ雲 明日は晴れるゆびきりげんまん

眠れずの朝の憂鬱ひつじ雲百匹千匹そらに悠々

人生ははかなきものと雲眺む一期一会にあこがれ持ちて


11月

ゆるき終日

色ながら散りゆくもみじ寺庭に季節(とき)を守りて建つ高き塔

目に耳に高徳院の史をたずね紅葉をたどるゆるき終日

不確かな時代を生きてここにある自分を解りかけし五十年

常々に思わぬ数のサイの目に運の善し悪し言いつ今年も

平均のなかに生きたる半世紀 青き卵を剥く期待して

朱と燃えていよいよ深くもみずる葉なごりの色を目にも焼き付け



12月

格は残りぬ

発達の小児科学という医学受け留め難きままの幾年

アスペルガー・多動と診断受けし子も個性と受けとむ保育の室に

強がりの何たるかなどは知らねどもおさなの小鼻ピクリと耐えぬ

勝つことの価値を語りし保護者背に呪文をとなう「負けるが勝ち」と

さよならに代えし「またね」の言の葉はただ一人を見守る一葉

希望なる光微かに 崩壊のアイソン彗星 核は残りぬ


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